(この記事は2013年3月15日時点の情報です)
吉岡宏幸 先生(脳神経外科)
「ならない」「再発させない」。脳卒中の症状、原因、予防について
緑井脳神経外科
【住所】広島市安佐南区緑井5-29-18 緑井ゆめビル2F
【TEL】 082-831-3230
患者思いの吉岡院長の対応はとても優しく、病気に対する不安を和らげてくれる
脳卒中。あまりにも怖い病気なので、「自分もかかってしまうかも?」など思ったこともないし、考えるのも嫌だという人が多いかもしれません。
「私はまだ若いから大丈夫」という方! 今や脳卒中は若年化していて、若い方でもかかる人が増えているんですよ。
今回、「緑井脳神経外科」の院長、吉岡宏幸先生に、脳卒中がどんな病気なのか伺いました。
いつまでも家族が健康でいられるために、「脳梗塞」「脳内出血」「くも膜下出血」を寄せ付けない生活を心がけましょう!
脳卒中とはどんな病気なんですか?
「脳卒中」とは、脳の血管障害により脳の組織がダメージを受け、様々な症状を引き起こす病気の総称です。代表的なものとして、「脳梗塞」「脳内出血」「くも膜下出血」があります。
脳の血管が詰まることにより発症するのが脳梗塞、血管が破れて出血することで起こるものが、脳内出血とくも膜下出血です。
脳に血液を送る血管に障害が生じると、本来、血液が送られてくるはずだった領域に栄養が届かなくなったり、出血によって脳が破壊されたり圧迫されて脳の細胞が死んでしまいます。そのため、倒れて意識がなくなったり、麻痺が起こるといった様々な症状が現われます。
たとえばどんな症状がありますか?
脳卒中の症状というのは、脳梗塞ならこの症状、脳出血ならこの症状、というものではなく、脳のどこにダメージを受けたかにより異なってきます。
たとえば、運動を司る場所がダメージを受ければ麻痺の症状が現われますし、感覚を司る場所であれば、しびれが出たり、感覚が鈍くなります。視覚を司る後頭 葉でしたら、目そのものには異常がないのに、視野欠損が生じて見える範囲が狭くなりますし、小脳であればバランス感覚が悪くなって、めまいやふらつきが起 こります。
また、言語障害の症状であっても、聴覚を司る側頭葉が損傷を受けた場合は、言語を理解する働きが悪くなるため、相手の話していることが理解できな いといったことが起こってきますが、前頭葉の言語野が傷ついた場合でしたら、相手の話すことは理解できていても、自分の思っていることを話せないといった症 状が見られます。
同じ脳出血でも「脳内出血」と「くも膜下出血」ではどこが違うのですか?
どちらも脳の血管が破れて出血が起こるものですが、出血する場所が違います。脳内出血は文字通り、脳の中で出血が起こるものです。一方、くも膜下出血は脳の表面で、脳を覆っている「くも膜」と「軟膜」の間の「くも膜下腔」というところで出血が起こります。
くも膜下腔には主幹動脈と呼ばれる太い血管が通っています。この太い動脈の分岐部に発生した“こぶ(脳動脈瘤)”が破れて、急速に脳の表面全体に出血が広がって脳を強く圧迫するため、それまで健康だった人が突然倒れ、そのうち約1/3は死に至る怖い疾患です。
先ほど、脳梗塞と脳出血では症状的に違いはないとお話しました。小さな病変の場合はその通りなのですが、非常に広汎な脳梗塞の場合や比較的大きな脳内出血の場合は、脳の腫れや流れ出た血液による圧迫のため、ダメージを受けていなかった周辺脳組織も働けなくなってしまいます。これらの圧迫を取り除くために、血腫を除去したり頭蓋骨を取り外して圧力を頭蓋外に逃がすための手術が必要になり、重症化することも多 いのです。
では、なぜ脳卒中になってしまうのですか?
以前なら、脳卒中はご高齢の方がかかる病気といったイメージでしたが、近年は若い方にも増えています。その原因としては、食事をはじめとする、生活スタイルの変化が考えられます。
脳卒中は、脳の血管障害により引き起こされる疾患ですが、ではそのもととなる血管障害はなぜ起きるのでしょう? そう、高血圧、糖尿病、脂質異常といった生活習慣病が動脈硬化を引き起こし、血管を詰まらせたり、破れやすくするためです。
一人暮らしの若い会社員や単身赴任のお父さんで、食事は外食かお弁当がほとんどで、仕事が忙しいため睡眠不足、運動不足。そのうえ、お付き合いでお酒を飲 むことが多い。こんな生活をしている方はいませんか? 食生活の偏りや毎日の不摂生は、知らず知らずのうちに血管を老化させてしまいます。
脳卒中は、その症状は突然やってくるものですが、そもそもの原因は不摂生の積み重ねによるものです。このようなリスクファクターが多いと、やはり若い方でも脳卒中になってしまいます。
病気の前兆ってありますか?
脳卒中の疑いのある症状としては、しびれ、めまい、ふらつ き、言語障害、視野障害、ろれつ困難がみられます。日常生活の中で、前記症状のほかに、つまずきやすい、スリッパが脱げやすい、物が握りにくい、箸がつまみにくい、軽い麻痺 があるといった自覚症状がある方は、早めに専門医で診察することをおすすめします。
日常生活の中で、「ちょっとおかしいけど、どうかな?」と思うことは、とても重要です。特に、血圧が高い、コレステロールが高い、糖尿病がある方、また、 ご自分の親や兄弟で脳卒中にかかった人がいる方は、病気に対する意識を持って、常に気を付けておくことが大切です。病気が早く発見できるかどうかで、治療 も大きく変わってきますからね。
「ちょっとおかしい?」と気が付くこと、「ちょっとおかしい?」と感じたらすぐに診察、早めに検査を受けること。脳卒中を重症化させないポイントです。
脳卒中の治療についてお聞かせください。
脳卒中で倒れた直後の急性期の治療は、手術や血栓を溶かす薬を投与する点滴などの内科的治療が行います。血圧を管理し、リハビリを行いながら機能回復に努め、状態が落ち着いて急性期の状態を乗り越えることができたら、二次予防に取り組みます。
脳卒中は一度なってしまうと、再発する可能性が極めて高い病気です。中でも再発率が最も高いのは脳梗塞で、1年で再発する確率は10%、5年であれば30%、10年なら50%という統計が出ています。
そこで、クリニックでの通院治療は、再発を防ぐための治療がメインになります。
最新式のドイツ製高精度MRやCTなど、検査機器を充実させ早期発見に務めている
クリニックではどのような治療を行うのですか?
脳梗塞であれば血液を固まりにくくするお薬を飲んだりもしますが、高血圧の治療が上手くいっていない時にお薬を飲んでも、あまり効果は期待できません。脳卒 中の二次予防は、高血圧、糖尿病、脂質異常症など、病気の原因となった危険因子をしっかり治療することが重要です。特化した治療が必要な場合は、専門医と 提携して生活習慣病のコントロールを行い、病気を再発させないようにします。
また、脳卒中の治療では、後遺症とどのように付き合っていくかも大切です。寝たきりにならなかったとしても車いすや杖が必要となり、活動が制限されること もあります。体を使わなくなってしまうと、どうしても体が弱ってきますし、また、脳卒中を発症した後は、うつになる方が多いんですね。気持ちが落ち込んで 通院が継続できない患者さんは、やはり再発してしまう可能性が高くなってしまいます。患者さんのメンタル面のケアを行いながら、リハビリや再発予防に意欲 的になって頂けるようサポートすることも、地域のかかりつけ医としての大切な役目だと感じています。
地域のかかりつけ医としての思いをお聞かせください
通院されている患者さんの中には、治療やリハビリに積極的に取り組まれている方も大勢います。「今後の人生を少しでも豊かにしたい。」という気持ちで前向きに頑張っている方は、後遺症のハンディキャップを持ちながらも、明るく笑顔を忘れずに通院されています。
そんな患者さんの頑張っている姿を見ると、「絶対、再発させたくない」と思いますし、また、地域の人が脳卒中にかかる前に何とかしたいという気持ちになりますね。
今後も、「脳卒中にさせない(一次予防)」「脳卒中を再発させない(二次予防)」に尽力し、地域に密着した医療を提供していきたいと考えています。
医師のプロフィール
吉岡宏幸先生
●広島大学医学部卒業
●広島大学大学院博士(医学)課程修了
●島根県立中央病院
●マツダ病院 副医長
●国立がんセンター
●広島大学附属病院 助手
●独立行政法人呉医療センター•中国がんセンター
●広島市立安佐市民病院 部長
‐資格‐
・医学博士
・日本脳神経外科学会 専門医
・日本脳卒中学会 専門医
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