(この記事は2013年3月5日時点の情報です)
井口裕樹 先生(泌尿器科)
EDはありふれた、治る病気です!!専門医に相談するのが治療への近道。
いぐち腎泌尿器クリニック
【住所】広島市中区紙屋町2-2-2紙屋町ビル5階
【TEL】 082-242-1145
男性不妊治療で井口院長のもとを訪れる患者数は、大学病院・総合病院を含めても、中国四国地方では最多
最近はマスメディアでも取り上げられるようになり、EDが広く認知されるようになりました。ただ、EDの原因やEDにタイプがあることについてはあまり知られていないようです。
今回は、ED、男性不妊治療、LOH症候群(男性更年期障害)の専門的診療を行う、「いぐち腎泌尿器クリニック」の院長、井口裕樹先生にEDについて伺いました。EDはデリケートな問題でもあるため、受診するきっかけがつかめず、一人でまたはご夫婦で悩んでいる人もいるかもしれません。ですが、井口先生いわく、「EDはありふれた病気、治る病気」なんだそうです。男性不妊治療についても、とても参考になる貴重なお話を伺うことができました。
EDとは具体的にどんな病気ですか?
EDは男性特有の症状で、いわゆる勃起障害です。勃起できない、勃起はするが性交渉の途中でダメになってしまい、射精までもたないといった状態です。
EDは大きく分けて2種類あり、ストレスや心理的な理由による心因的EDと、他の病気や手術などが原因である器質的EDがあります。どちらのタイプのEDであるか診断したうえで治療を開始しますが、40歳以下の若い方の多くは心因的EDであると言えます。
精神的な理由でEDになってしまうんですね。
よく勘違いされるのですが、勃起という現象は筋肉で起きているわけではありません。血管が拡張することで起きる現象なので、自分でどうにかしようと思ってどうにかなるものではないのです。リラックスした状態でしか勃起は起こりませんから、むしろ、意識してしまうことがプレッシャーとなり、逆効果になってしまいます。
何らかの理由で過去にうまくいかなかったことがあって、「失敗したらどうしよう」「失敗したら相手に悪い」といった不安が先立ち、緊張した状態ではますます勃起しにくくなってしまいます。この繰り返しによって、「自分はダメなんじゃないか?」と思うようになり、次第に性交渉を回避する方向につながり、さらに悪くなってしまうといった悪循環が起きてしまいます。
当院は男性不妊治療にも力を入れていますが、排卵日を意識しすぎて失敗してしまう方も多いですね。「月に一度の大切な日だから!」という気持ちが、精神的なプレッシャーになっているように思われます。
どんな方が心因的EDになりやすいのですか?
真面目な性格の人、それから性交渉の経験が少ない人ですね。真面目な方は「リラックスしよう、リラックスしよう」と思い過ぎるとますますリラックスできなくて、自分にプレッシャーをかけてしまう傾向にあります。また、経験が少ないことが緊張や不安、自信喪失につながり、EDになってしまう方が多く見られます。
心因的EDの治療では、ED治療薬を上手く使いながら、成功経験を積み重ねていき、自信を取り戻してもらうことが必要です。今は良い薬がたくさん開発されていて、心因的EDの大多数は薬で改善されます。成功経験を積み重ね徐々に薬を減らしていきながら、「薬を使わなくても大丈夫かもしれない」といった自信につなげていくことが重要です。
器質的EDはどういったものですか?
器質的EDの原因として、一番に挙げられるのは動脈硬化です。動脈硬化とは高血圧やコレステロールが原因で血管が詰まり、血液の流れが悪くなる生活習慣病ですが、EDにも影響していると考えられています。
たとえば、心臓の周りの冠動脈を鉛筆の太さで表すなら、ペニスに通る血管は鉛筆の芯ぐらいで、非常に細いんです。動脈硬化になった時、心臓の血管とペニスの血管とではどちらが詰まりやすいか考えたら、細い血管の方が詰まりやすいのは明らかですよね。血管が詰まってEDが起きている場合は、心筋梗塞の前兆ではないかとも言われています。
血圧が高い方、糖尿病の方は比較的EDになりやすく、50歳を境に心因的EDよりも器質的EDの割合が増える傾向にあります。ただ、近年の食生活の変化で動脈硬化になる人が若年化しており、若い方でも器質的EDと診断されるケースが増えています。
器質的EDの治療はどのように行うのですか?
血管が問題の場合は、ED治療薬だけで治すことは難しいです。ED治療薬を飲みながら、同時に血圧や糖尿病をきちんとコントロールして、動脈硬化を改善する必要があります。
ED治療薬は狭心症の薬と一緒には飲めませんし、前立腺がんの手術をした際に勃起神経を取られた方には、ED治療薬が効きません。薬を使わない治療としては、プロスタグラディンという注射をしたり、厚生労働省が認可した陰圧式勃起補助具を使って勃起を促す方法があります。
注射治療を行っている医院が広島では少ないため、当院には市民病院や他の医院からの紹介の患者さんもたくさん来られますが、過去に受けたがん手術が原因で10年以上勃起できず諦めていた方が、注射治療で勃起できた時は本当に心から喜ばれていましたね。
薬の副作用が心配ですが。
EDの治療薬は3種類あります。1999年にバイアグラが出て、2004年にレビトラ、2007年にシアリス。4時間効くもの、36時間効くものがありますが、いずれも副作用が少なく効果が高くて、心因的EDであればほぼカバーできるし、少々血管が詰まっている人でもかなりの効果が期待できます。
ED治療薬への心配は副作用よりもむしろ、「いつ薬を止められるか?」ということが問題ですね。特に心因的EDであれば、薬で一時的に解決はするものの、経験を自信につなげて薬に頼らなくてもいい状態に導いていかなければいけません。体はどこも悪くなく精神的な問題になりますから、泌尿器科としてのアプローチでどこまでカバーできるかがED治療の課題です。
EDの患者さんは日本にどのくらいいるのですか?
500万人はいると言われていますが、症状があっても訴えていない方がかなりの数いると思われますので、実際はもっと多いと考えられます。病気の性質上、「恥ずかしい、プライドが傷つく」といった理由でオープンにしたがらない方もいますし、「もう子どもを作る必要がない」「もう年齢的に機能しなくてもよい」といった考えで、あえて問題にしない方もいます。
EDは放置すればするほど、治りにくくなってしまいますが、それで体調が悪くなったり病気になるなど、何か大きな問題を引き起こすものではありません。ED治療を受けるかどうかはQOL、つまり生活の質の問題なのです。
40代で「もういい」と思うか、80代で「まだまだ」と思うか。それは本人の価値観によって違ってきます。また、本人が良くてもパートナーに欲求があるかもしれません。EDを治療することで今よりも生活の質が上がるのであれば、治療も選択の1つではないかと思います。
男性不妊症・勃起障害・LOH症候群(男性更年期障害)の専門的診療を行っている。場所はアストラム本通駅からすぐ
ED治療を考えている読者にひとことお願いします。
ぜひ知っていただきたいのは、EDは誰でもかかり得る「ありふれた病気」であること、「治療で十分改善できる病気」であることです。
男性にしてみると、「EDと向き合うなんてプライドが傷つく」「女性にはEDのことを隠したい」といった気持ちがあるかもしれませんが、実は当院への問い合わせや相談は、奥さんからが多いんです。「結婚して3年になりますが、一度も上手くいったことがありません」といったメールが寄せられます。
女性も心配してくれていますし、EDを克服して薬に頼らなくてもよくなった患者さんはたくさんいらっしゃいますので、「このままでは良くない」と思っている方は、一度受診してみてはいかがでしょうか?
EDの治療は全額自費診療です。自費診療と聞くと高額なイメージを持たれるかもしれませんが、患者さんの中には「思っていたような金額ではなかった」と安心される方も多いので、皆さんが考えている額とはもしかしたらズレがあるかもしれません。治療をお考えの方はED専門治療を行っている医院に聞いてみるといいでしょう。
最後に「広島ドクターズ」の読者にアドバイスをお願いします
当院は、男性不妊症に対する専門的診療を行っており、産婦人科と連携を取りながら、少しでも精子を増やし妊娠の可能性を高める治療を行っています。精液中に精子がいない場合に行う精巣内精子回収術や、「精巣が極端に小さい」「抗がん剤使用後」「染色体異常」といった、通常の方法では精子の回収が難しいと思われる場合でも、手術用顕微鏡を用いた回収方法により妊娠を可能にします。
不妊治療では、女性は積極的に産婦人科で検査や治療を受けますが、男性は嫌がってなかなか受診したがりません。でも、子どもが欲しいと考えているなら、上手くいかない場合は早めに医療機関に相談して、治療や妊娠への道筋を立てることをおすすめします。
高齢妊娠がマスコミでも取り上げられ、女性の出産年齢も年々高くなりました。確かに、今の産婦人科の技術は目覚ましく進歩しましたが、やはり女性の年齢が高いと苦戦します。男性不妊治療を始めたからと言って、すぐに妊娠できるというわけではありませんし、奥さんの年齢も待ってはくれません。せっかく旦那さんの方がいい状態になったのに、奥さんの年齢的に間に合わなかったという時もやはりあるんですよ。
ですから、「どうしよう、どうしよう」とためらっているなら、迷っている時間が本当にもったいないので、早めに専門医に相談することをおすすめします。「少しでも早く受診してください!」と言いたいですね。
また、不妊治療で来られる方の約4割がEDであると診断されます。男性側の性癖所見が早く発見できて改善すれば、不妊が解消される確率はかなり高くなりますし、不妊治療にかかるコストも減らせます。
不妊治療に携わっている者として、患者さんからの妊娠・出産の報告は何よりも嬉しいですね。今後も、「子どもを授かった」「パートナーとのコミュニケーションが良くなった」「生活の質が上がった」と患者さんに喜んでもらえるように、また少子化対策に少しでも貢献できればと思っています。
医師のプロフィール
井口裕樹先生
●香川医科大学(現香川大学医学部)卒業
●岡山大学大学院修了
●福山市民病院・岡山大学医学部附属病院・広島市民病院で勤務
‐所属学会・資格‐
・日本泌尿器科学会専門医
・日本性機能学会専門医
・医学博士
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