(この記事は2013年3月12日時点の情報です)
杉本嘉朗 先生(耳鼻咽喉科)
「メニエール病」ってどんな病気? めまい、耳鳴りはストレスが原因かも?!
杉本クリニック
【住所】広島県広島市中区国泰寺町2-4-2
【TEL】 082-241-4187
杉本院長の著書『めまい 難聴 耳鳴りの対策』では、メニエール病について詳しく解説している
ストレス溜めていませんか? ストレスからくる耳の病気があるんです。それは「メニエール病」。
突然の激しいめまいに襲われ、耳鳴りや耳の閉塞感を感じ、進行すると難聴になってしまうこともあるといいます。しかも、現代のストレス社会においては、年齢層を問わずメニエール病にかかる方が増えているのだとか。
今回は、「杉本クリニック」の院長、杉本嘉朗先生に、メニエール病についてお話を伺いました。
めまいが起こったら、誰でもパニック状態になります。ですが、「めまい、難聴、耳鳴りを自覚したら、恐れず騒がず、でも迅速に専門医を受診!」取材の中で、杉本先生が最も強調されたフレーズです。
メニエール病とはどんな病気ですか?
めまいを起こす耳の病気の中で、一般の方にも知られているのが「メニエール病」です。
メニエール病の症状としては、突発的な回転性のめまい発作に襲われます。自分は静かに座っているのに、急に周りの風景がグルグル回り出したり、玄関で靴の紐を結んで立ち上がった途端、急にめまいがしてその場にしゃがみ込んでしまったりなど。めまいは数十分からひどい場合だと数時間続くことがあり、何度も反復します。発作が繰り返される間隔は安定しておらず、めまいが毎日のように続く時もあれば、週に1回、月に1回、年に数回ということもあります。また、めまいが激しい場合でしたら吐き気を催し、嘔吐してしまうこともあります。
めまいの発作が起こると、仕事や生活にも支障をきたし、中にはパニック状態になってしまう方もいます。発作が突発的であるため、発作への不安からQOL(生活の質)が著しく低下してしまうことも考えられます。
めまい以外の症状も現れるそうですね。
メニエール病の症状は、めまいだけではありません。耳の閉塞感や圧迫感、耳鳴り、難聴も起こります。
耳鳴りの場合は、ザーッというような比較的低い音が聞こえることが多いです。難聴の場合でしたら、低い音から聞き取りにくくなることが多く、よく「男性の低い声が聞き取りにくくなった」と訴える患者さんがいらっしゃいます。めまいの発作を繰り返す度に中音域や高音域の音も聞き取りにくくなって、徐々に様々な音が聞こえにくくなっていきます。中にはめまいの症状だけ現れる方もいますが、様々な症状を繰り返すことによって、聴力が徐々に低下していくのがメニエール病の特徴と言えます。
メニエール病は発作を繰り返す度に悪化する、進行性の病気です。進行の度合いには個人差がありますが、急速に悪化することもありますので注意が必要です。
メニエール病はどうして起こるのですか?
メニエール病は、内リンパ液の生産と吸収のバランスが崩れることで起こります。内リンパ液の過剰生産により、音を伝える「蝸牛(かぎゅう)」、平衡感覚を司る「半規管(はんきかん)」「耳石器(じせきき)」に内リンパ液が溜まって腫れ上がることが原因だと考えられています。
「なぜ内リンパ液の過剰生産が起こるのか?」など、未だ解明されていないことが多いメニエール病ですが、ストレスと密接な関係があると言われています。
最近の研究で分かってきたことは、めまいの発作が比較的起こりやすいのは、精神的な疲労や肉体的な疲労を感じている時、睡眠不足の時が多いということです。また、気圧が低い時にも発作が起こりやすく、冬や雨が続いて気圧が低い日にめまいの発作が起こりやすいようです。
どのような人がメニエール病になりやすいのですか?
メニエール病は肉体的、精神的なストレスの影響を受けやすい病気であることから、発症年齢が若いことも一つの特徴です。男女比では大きな差はありません。
病気になりやすい人として、性格的に神経質な人、几帳面な人。完璧主義の人に起こりやすい傾向があります。仕事が忙しかったり、対人関係が上手くいかなかったり、経済的な悩み、転職や配置変換など、自分では処理できないほどの悩みを抱えた時に、メニエール病を発症するケースが目立ちます。現代社会においては、人間関係や経済悪化への不安でストレスを抱える人が増えており、メニエール病になる人は増加傾向にあります。
治療についてお聞かせください。
メニエール病は治療することで治る病気です。
治療では、薬物療法や患者さんへの生活指導を行いますが、ストレスから発作を繰り返す場合には心理療法を行います。専門のカウンセラーが患者さんの悩みを聞き、生活の中で抱えているストレスを避けるためのアドバイスをします。よほど重症な方でない限り、手術は一般的には行いません。
メニエール病にならないために心がけることは?
日常生活でのストレスを避けることが大切です。起床、就寝、食事の時間を決めて、規則正しい生活を心がけましょう。疲れをため込まないよう十分な休息を取ることも必要です。日頃からリラックスを心がけ、音楽やスポーツなど、自分の好きなことでストレスを解消しましょう。
年4回発行される「杉本クリニック便り」では、健康に役立つ医療ニュースを発信中
病気の前兆はあるのですか?
病気が起こる前兆のようなものは特にありません。いきなりめまいに襲われるため、初めての方はパニック状態になって救急医療にかけつけるケースが多いようです。
「耳の異常でめまいが起こるの?」と意外に思われるかもしれませんが、内耳には身体の傾きや回転を感じる器官があり、内耳の異常によりめまいが起こることは多いのです。めまいで救急搬送される患者さんの7〜9割は耳の病気が原因です。
「めまいは何科で診てもらったらいいの?! 内科?脳外科?精神科?」と迷う人が多いと思います。ですが、めまいの中には早期に治療しないと危険な病気もありますので、どこに行こうか迷っているうちに日が経ってしまうのが一番良くありません。
めまいの症状は耳鼻科医が担当するものがほとんどですから、思い当たる原因がなければ、まずは耳鼻科を受診しましょう。もし耳以外の病気が疑われるうような場合でしたら、適切な科の専門医を速やかに紹介してもらえますので安心してください。
めまい、難聴、耳鳴りを自覚したら、恐れず騒がず、でも迅速に専門医を受診してください。その上で、治療されることをおすすめします。
最後に「広島ドクターズ」の読者にアドバイスをお願いします
自分の健康状態を把握し、健康のことについて気軽に何でも相談できる「かかりつけ医」を持ちましょう。病気や健康について正しい知識を得るための情報源として、かかりつけ医を活用することは大切です。
かかりつけ医はいざという時に適切な判断を下して、最適な診療を行ってくれます。高血圧や糖尿病のように完全に治すことができない病気でも、医師から正しい情報や知識が得られれば、病気をコントロールしながら普通に生活することができますし、がんのように治りにくい病気でも、早期発見さえできれば完全に治すこともできます。
また、かかりつけ医とともに「かかりつけ薬局」を持ちたいものです。ご高齢の方など、服用している薬が多くなると、副作用が出てくる可能性が多くなりますし、飲み方を間違えたりすることも多くなります。
「かかりつけ医」「かかりつけ薬局」を選ぶのは、友人を選ぶのと同じ。大事なことは信頼感だと思います。
医師のプロフィール
杉本嘉朗先生
●広島大学医学部卒業
●広島大学医学部大学院修了
●広島大学医学部 講師
●EAR Research Institute(Los Angeles)
●広島大学医学部 助教授
‐資格‐
・日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
・身体障害者福祉法指定医
・日本医師会認定産業医
・日本気道食道科学会認定医
・日本医師会認定スポーツドクター
・日本体育協会認定スポーツドクター
‐所属学会‐
・日本耳鼻咽喉科学会会員
・日本気道食道科学会会員
・日本鼻科学会会員
・日本口腔咽頭科学会会員
・日本めまい平衡医学会会員
・日本聴覚医学会
・日本顔面神経研究会
・日本小児耳鼻咽喉科研究会
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