(この記事は2013年7月1日時点の情報です)
中谷徳雄 先生(整形外科)
自分の足で一生歩けるように! 整形外科のリハビリテーション
中谷整形外科
【住所】広島市東区愛宕町9-17
【TEL】 082-261-0312
これまでのキャリアと知識を生かし、地域のお年寄りの自立した生活をサポートする中谷院長。
特にお年寄りの患者さんにとって「リハビリ」は、単に身体機能回復のための訓練を指す言葉ではありません。生涯に渡って自立した日常生活が送られるよう、その人の機能能力をできるだけ引き出し、自分らしい生活を取り戻すことがリハビリテーションの本当の役目です。
今回のレポートは、「中谷整形外科」の院長、中谷徳雄先生に整形外科のリハビリについてお話を聞かせて頂きました。
加齢による体の衰えは仕方のないこと。ですが、「一生自分の足で歩く!」という希望を持って諦めない人には、リハビリが全力でサポートしてくれます。
今後ますます高齢化が進行する社会において、より多くの人が幸せに長生きできるために、整形外科のリハビリが果たす役割は大きいと思われます。
リハビリテーションを行う目的とは?
整形外科では治療のほかに、症状や疾患に合わせてリハビリを行います。「リハビリ」と聞くと「回復促進や悪化防止のための機能訓練」といった印象を持たれる方が多いと思いますが、広い意味でのリハビリの目的は、専門的な技術と知識を用いて、その方の身体機能をできる限り引き出し、安心して幸せな日常生活が送れるようにすることです。
当院はお年寄りの患者さんが多いのですが、痛みを緩和させたり、歩行能力の低下を予防することだけが目標ではなく、その方が自分の足で一生歩けて、自分の身の回りのことは自分でできる自立した生活が送れるために、必要な筋力をつけ、関節を動かす練習を行っています。
お年寄りに多い、リハビリの必要な症状にはどのようなものがありますか?
腰の痛み、膝(ひざ)の痛みですね。
脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)、変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)の治療で、リハビリを受けられる方が多いです。
「脊柱管狭窄症」とは、骨や関節の老化が原因で脊柱管が狭くなり、神経を圧迫することで起こる病気です。腰や足に痛みやしびれが生じる、腰が曲がる、歩くことが困難になるといった症状があり、年齢に比例して発症頻度が増加するお年寄りに多い病気です。
「変形性膝関節症」は、膝関節の軟骨が磨り減って骨が変形することで、痛みが生じたり、水がたまったり、膝が曲がらないなど可動域が制限される病気です。原因は関節軟骨の老化のほか、使い過ぎによる膝への過重負担で進行することもあり、お年寄りだけでなく太っている方にも多いのが特徴です。
どちらの疾患も進行すると歩行が困難になり、活動範囲が制限されます。体は使わないでいると急速に筋肉が衰えて、全身の身体機能が低下してしまい、ますます歩けなくなるといった悪循環が起きてしまいますから、要介護状態や寝たきりにならないためにも、リハビリで身体機能の改善を図ることが大切です。
お年寄り以外の患者さんでは、どのような症状が多いですか?
学生さんでしたら、骨折や靭帯損傷(じんたいそんしょう)の治療後のリハビリですね。長期に渡ってギプス固定をすると、関節が固まり可動域が狭くなってしまいます。また、使わなかった筋肉が細くなるため、せっかくケガが治っても今までのようにうまく機能してくれません。一時的に衰えた筋肉、関節、骨の機能回復を図るために、リハビリを行う必要があります。
あと、40代50代の人に起こりやすいのが四十肩や五十肩です。これは肩関節の周囲に起こる炎症によって痛みが生じて、思うように肩が動かせなくなるもので、リハビリでは肩甲骨と腕の骨をつないでいる腱板(けんばん)を動かす練習をしながら、肩関節の可動域を広げる訓練を行います。温熱療法で肩を温めてから行うとより高い効果が得られます。
リハビリではどのようなことをするのですか?
「運動療法」では、日常生活に必要な動作が円滑に行えるように、関節可動域を広げる訓練や、筋力を高める訓練、歩行訓練といったものを行います。特に膝などの荷重関節は、そこにかかる負荷が大きいほど変形や痛みを進行させてしまうので、四頭筋訓練で筋肉を鍛え、支える力を強化し、膝にかかる負担を少なくしていくことも大切です。
「物理療法」とは、主に医療用機械を用いて行うリハビリです。マイクロ波治療器、ウォーターベッド、ホットパックなどを使い、温熱作用で関節を温め血行を良くして、痛みの緩和や関節可動領域の改善を行っていきます。
リハビリのメニューはどのように決まるのですか?
リハビリの内容や期間は、それぞれの病気やケガによってある程度決まっているのですが、患者さんによっては、「いつまでに治したい」「ここまでは動かせるようになりたい」などそれぞれ希望をお持ちですから、無理をしない程度に患者さんの希望を取り入れながら、その人に合ったプログラムで行っていきます。
痛みが強い場合は温熱療法を行ったり、注射で痛みを軽減させることもできます。
リハビリを開始する時期も患者さんによりますが、骨折などの場合は固定期間が長ければ長いほど、元の状態に戻すのに時間がかかってしまいますから、治療と並行してリハビリを行うこともあります。
リハビリを成功させるための秘訣があれば教えてください。
やはり一番はご本人のやる気です。特にお年寄りのリハビリでは、気力のある方と「もういいや」と諦めてしまう方とでは全然違ってきます。
これまで多くの患者さんを診てきましたが、とても歩けそうになかった人がちゃんと歩けるようになったのを見て感動したことは何度もあります。もちろんご本人の努力が大きいのですが、やる気次第でかなりのところまで回復しますので、希望を持ってリハビリに取り組んでもらえたらと思います。
また、支えてくれる家族がいれば、リハビリがスムーズに進むことが多いです。特にお年寄りのリハビリでは、「今日はどうだった?」「どんなことをしたの?」と声をかけてあげるだけでやる気になるきっかけになります。
家族が関心を持って応援してあげることが、リハビリ成功の一番の秘訣ですから、歩ける距離が増えた時は一緒に喜んであげて下さいね。
医院で心掛けていることはありますか?
患者さんには正直に現状を伝えながらも、患者さんが諦めてしまうようなことは決して言わないようにしています。中には予想を遥かに超えて良くなる人も本当にいるので、患者さんが望みを持てるように励ましています。
あとは、個々のリハビリの目的もきっちり説明するようにしています。これをすることで、「ここの関節の可動域が広がる」とか、「ここの筋肉が鍛えられる」とか。どんな効果が得られるのか分からないままでは、リハビリにも力が入りませんからね。
また、リハビリは人と人が接してやることですから、患者さんと理学療法士とのコミュニケーションも大切です。世間話などもしながら、できるだけ楽しい雰囲気でリハビリができるようにしています。相性もあると思いますが患者さんのリズムに合わせて、リハビリを頑張れるような環境を心掛けています。
症状を把握して、適切な治療法を提案。患者の日常生活や精神面も考えたきめ細かな医療を提供する
最後に、診療を通じて感じていることがありましたらお聞かせ下さい。
日本人の平均寿命が延び、整形外科の疾患は今後ますます増えていくと思われます。
高齢になってから、太ももの骨を折る大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)などのケガをしてしまうと、手術だけでは歩けるようにならないことも多く、術後のリハビリが重要になってきます。
「自分はもう歳だから」とそこで諦めてしまう方もいらっしゃいますが、せっかく内臓疾患がなく健康で長生きしているのに、歩けないというのはもったいないと思いませんか?
死ぬまで自分の足で歩けて、自分のことは自分でできるということは、本当に幸せなことです。リハビリで歩けるようになる可能性が少しでもあるのなら、どうか諦めないで「また歩けるようになるぞ!」と前向きな気持ちになってもらえたら嬉しく思います。
医師のプロフィール
中谷徳雄先生
●琉球大学医学部卒業
●獨協医科大学整形外科教室入局
●那須南病院 整形外科科長
●下都賀総合病院 整形外科医長
●河石記念病院勤務
‐資格・所属学会‐
・日本整形外科学会 専門医
・日本リハビリテーション学会 認定医
・日本体育協会 公認スポーツドクター
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