(この記事は2013年11月26日時点の情報です)
兼山敦 先生(整形外科)
女性の皆さん必見!「骨粗しょう症」の予防と治療について
兼山整形外科医院
【住所】広島市西区南観音7丁目3−18
【TEL】 082-293-7878
麻酔科医でもある兼山院長は、神経ブロック注射など痛みにも対応した整形外科治療を行っている
若い頃からのカルシウム摂取不足のツケは、50代にやってきます。そう、女性の大敵「骨粗しょう症」。
骨粗しょう症はほとんどの女性がなってしまう病気と言っても過言ではありませんが、骨密度検査を習慣化して若い頃からカルシウム摂取を心がけていれば、将来、骨粗しょう症で苦しむリスクを減らすことができます。
今回は「兼山整形外科医院」の院長、兼山敦先生に、骨粗しょう症の症状や治療、予防対策についてお話を伺いました。
骨粗しょう症は自覚症状がないまま進行する病気。自分の骨が元気なのかそうではないのかなんて、検査をしなければ分かりません。子どもの頃から「牛乳を飲みなさい」と言われてきたけど、その必要性を実感できていない人も多いのではないでしょうか?
兼山先生のレポートが、多くの女性にとって骨粗しょう症予防を意識するきっかけになればと思います。そして、さっそく明日から「1日2杯の牛乳」を実践してもらえたら!
骨粗しょう症とはどういったものでしょうか?
骨密度の低下により骨がスカスカになり、わずかな負荷によっても骨折しやすくなる骨の病気です。骨粗しょう症の原因は、骨の中のカルシウム分が少ないだけではありません。骨質といってカルシウムを支えるコラーゲン繊維が不足がちになることで骨の構造が弱くなり、全身的に骨がもろくなってしまいます。
骨がもろくなると、わずかな衝撃でも骨折してしまい、骨が変形しやすくなります。特に高齢の方が足の骨や背骨を骨折すると、日常生活に様々な支障が出てしまうこともあります。
一般的な骨粗しょう症は、加齢や栄養不足が要因となって起こる「原発性(一次性)骨粗しょう症」ですが、別の病気が起因となる「続発性(二次性)骨粗しょう症」もあります。胃の切除や腎臓病、リウマチによる栄養障害、ステロイド剤の副作用、「骨軟化症」といって生まれつき骨が弱い病気によって、骨粗しょう症になることもあります。
女性に多い病気と聞きますが。
骨粗しょう症は圧倒的に女性に多い病気です。閉経を迎えた女性がほとんどなってしまうと言っても大袈裟ではありません。
骨量というのは20代をピークに増えていき、その後は年をとるごとに減っていく一方です。さらに女性は閉経を迎えると、骨形成を促進するホルモンの分泌が低下するため、骨を「作る量」よりも「失われる量」が上回ってしまい、骨吸収と骨形成のバランスが崩れがちになります。「50歳が骨粗しょう症の入り口」と言われるのは、そこで骨量が急激に減少してしまうからです。
年齢とともに骨が減っていくことやホルモン分泌が低下してしまうことは、誰にでも起こる自然な現象なので仕方がないことです。でもだからと言って、すべての人が骨粗しょう症になるわけではありません。若いうちからしっかり骨量を蓄えておけば、急激な骨密度の低下もカバーできるのです。
若い頃からの骨量が骨粗しょう症に関係するのですね。
骨粗しょう症の診断は、YAM値(Young adult mean)といって20〜44歳までの女性の骨密度の平均値を指標の一つとして見ていき、YAM値が70%以下であれば骨粗しょう症と診断されます。
50代でどっと骨が減少しても、YAM値70%以上をできるだけ長くキープできればいいのですが、そのためには10代、20代の骨の生成率が最も良い時期に骨密度を高めておく必要があります。老後の生活で苦しまないように貯金しておくのと同じで、閉経後の骨の減少に備えて若いうちからしっかり骨を蓄えておけば、骨粗しょう症のリスクを減らすことができるのです。
ですが、最近の若い方はほっそりとしたスタイルをしていて、偏食やダイエットで栄養が偏りがちです。昔は20代でYAM値が70%以下になる人はほとんど見られませんでしたが、近年では20代の方でも稀に骨粗しょう症と診断されることがあります。
できれば女性の皆さんは30代を過ぎたら、将来を見据えて骨密度の検査を受けるようにして欲しいですね。異常がなければ1、2年に1度で構いません。自分の骨密度を把握して将来、骨粗しょう症で苦しまないように予防をしておくことは重要です。
骨粗しょう症にならないために心がけたいことは?
骨を作るには、カルシウムを多く摂取することです。1日牛乳200ccを2杯飲むのが理想的で、寝る前に飲むと吸収率がアップすると言われています。
日本人は牛乳が嫌いな方が多く、飲むと下痢をするという方もいらっしゃいますが、牛乳を飲む習慣づけが難しければ、チーズやヨーグルトなどの乳製品を積極的に食べるようにしましょう。小魚や野菜もカルシウム含有量は多いですが、効率的にカルシウムを摂取するなら、やはり吸収率が高い乳製品がいいと思います。
また、腸でのカルシウムの吸収を助けるのがビタミンDです。ビタミンDは食事で摂取するだけでなく、日光を浴びることで体内生成することもできます。真っ黒に日焼けするほど日に当たる必要はなくて、日傘をさして散歩するくらいで十分です。
筋肉が鍛えられると、骨の細胞の活動が刺激されて骨が強くなるので、適度な運動も大切です。スリムになりたくてダイエットに励む若い方が多いですが、将来必ずやってくる骨粗しょう症を視野に入れて、日頃からバランスの良い食事と運動を心掛けて欲しいですね。
また、30代、40代になってからでも意識的にカルシウムを摂取していけば、50代になった時にぜんぜん違ってくるので、食生活の改善は今からでも遅くないですよ。
骨粗しょう症の治療についてお聞かせください。
お薬を使った治療が中心となります。骨粗しょう症の治療薬は、骨形成を促進するもの、女性ホルモンの補充療法、骨の減少を抑制するものと様々な効果があるので、その方にあったお薬を選択します。
積極的に骨を増やすものよりも、骨を減らすのを抑える薬の方が多く、治療で最もポピュラーに用いられているのがビスフォスフォネート製剤というお薬です。以前はお薬を毎日飲まないといけなかったのですが開発が進んで、1週間に1回、中には1ヶ月に1回飲むだけのものもあります。
閉経後の更年期の女性では女性ホルモンの補充療法が効果的ですが、乳がんや子宮がんのリスクを高めるといったデータもあるため、使用しづらい側面があります。最近では、骨吸収を促進する役割がある副甲状腺ホルモンを補充する治療も行われるようになりました。
骨粗しょう症ではいいお薬がたくさん出てきており、今後は骨を増やす効果の高いものも増えていくのではないでしょうか。
デイケアも併設。地域に根ざしたかかりつけ医として患者をサポートしてくれる
治療中に気を付けたいことは?
骨がもろくなるとわずかな衝撃でも骨折しやすくなります。特に高齢の方の骨折は、歩行が困難になるなどQOL(生活の質)が低下するだけでなく、寝たきりにもつながる恐れがあるため、段差でつまずいたり転倒しないように日頃から気を付けなければなりません。
骨折は自覚がないままに起こっていることが多く、X線検査をしてはじめて数か所の骨折が見つかることもあります。もろくなった骨に体の重みが加わることで背骨が圧迫骨折してしまうことが多く、1,2か所なら目立った姿勢の変化は見られませんが、それ以上になると背中が曲がったり、身長が縮んできます。背骨はいくつもの小さい骨が重なり合っているのですが前側が潰れることが多いため、骨粗しょう症の進行に伴って前かがみの姿勢になることが多いんです。
最後に「広島ドクターズ」の読者にアドバイスをお願いします。
骨粗しょう症では背骨が折れるケースが多く、先ほど説明した通り、どんどん前かがみの姿勢になって、下を向いて歩くような格好になってしまいます。でも、無理して姿勢を正そうとはしないでくださいね。背骨についている筋肉が背骨を圧迫して、ますます骨折を増やしてしまうだけです。1度骨折すると次々に骨折が起こりやすくなるため、日常動作ではできるだけ楽な姿勢を維持して、骨折を増やさないように注意しましょう。
若い方から見れば、「姿勢をしゃんとすればいいのに」と思うかもしれませんが、背筋を無理に伸ばそうとさせることをご高齢の方に言わずに、これ以上骨折が増えないように温かく見守ってあげて欲しいと思います。
医師のプロフィール
兼山敦先生
●広島大学医学部卒業
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