(この記事は2015年9月17日時点の情報です)
有田 竜二 先生(歯科)
口の中の細菌を上手にコントロールして、むし歯や歯周病を予防。
有田歯科医院
【住所】広島市中区小町6-23
【TEL】082-246-1200

最新の治療や検査方法を取り入れて、年齢を問わず一人でも多くの人の口を
健康にしたいと願っている有田先生。
食事のあと歯を磨かない人はほとんどいませんよね。毎日歯磨きしているのになぜむし歯になったり、歯周病になったりするのでしょう。
口の中にはもともとむし歯や歯周病の原因菌も含む、約400〜700種類の細菌が存在しています。むし歯や歯周病を防ぐには、悪玉菌をできるだけ減らし、歯だけでなく体にも有益な善玉菌を増やす、という口の中の細菌コントロールがたいへん有効に作用することをご存知でしょうか。
今回は、中区小町にある有田歯科医院の有田竜二先生に、細菌をコントロールして健康な口の状態を保つ歯周内科治療について詳しくお話をうかがいました。最新の検査方法や治療方法をいろいろと教えていただきましたよ。ご一読ください。
むし歯や歯周病の原因について教えてください。
口の中には常在菌が数百種類もいて、むし歯と歯周病はどちらも細菌が関与していることがわかっています。
むし歯の場合は主にミュータンス菌とラクトバチラス菌の2種類の菌が影響しています。
歯周病ではポルフィノモナス・ジンジバリスなど数10種類の菌が関係しています。
悪さをする菌を特定できるようになったことで、また進行状況によっても繁殖する菌が違うことを把握したことで、悪玉菌を減らして善玉菌を増やす、細菌コントロールによってむし歯や歯周病を防ぐことができるようになったのです。
細菌をコントロールできるのですね。ところでむし歯や歯周病は遺伝するのですか?
むし歯も歯周病は感染症ですから、基本的に遺伝的な要素はないと考えられています。感染源は身近にいるお母さんやお父さん、あるいはペットなどです。
もちろん歯並びや骨格などは遺伝的な要素が強いので、例えば歯ブラシが届きにくい歯並びが遺伝している可能性は高いと思います。そこへ身近にいる人から細菌が感染し、結果的に口の中の状態がとても家族で似てくることはあるでしょう。家族なら間食の頻度など生活習慣も似ていますしね。
ただ、むし歯や歯周病は遺伝的なものではなく、生活習慣病の1つだと言えると思います。
むし歯はどのように進行するのですか?
むし歯の原因になる菌は、ミュータンス菌とラクトバチラス菌です。どちらも糖分を餌にして酸を産生して歯を溶かすことでむし歯になっていきます。つまり、この2種類の菌をコントロールし、口の中を中性に保つ事ができればむし歯にはなりません。
食べ物が入ると口の中は一旦酸性に傾くのですが、食べ物が入ったことで唾液が出てきますよね。この唾液がある程度口の中を中性に戻す働きをするのです。ですから、唾液の分泌量が少ない人や、食べ物を口に入れる頻度が高い人はそのサイクルが短くなり、むし歯になりやすいと言えます。
歯の表面にはプラークが付着しますが、これは食べ物のカスではなくて細菌の塊です。プラークを顕微鏡で見ると細菌がたくさん見えます。ですから、磨き残しのチェックなどをきちんとして、プラークの着き具合を確認することが必要です。口全体でプラークの付着が15%以下でないとむし歯になります。
歯周病はどのように進行するのですか?
基本的に中学生を過ぎたぐらいから、歯周病には注意が必要です。口の中にある数100種類の細菌のうち、数10種類が歯周病に関係しています。中でも重度の歯周病に影響する3種類の菌があり、その増殖によってリスクが高まります。
また、女性ホルモンを餌にして繁殖する菌と進行を早める菌がいて、その菌が増えると若年性で進行性の高い歯周病になります。そのため、特に女性の場合は高校生ぐらいになったら注意が必要です。
とはいっても、歯周病原因菌は自体は特別なものではなく多かれ少なかれ誰の口の中にもある常在菌です。歯医者に2年も3年も行っていない人は気を付けないといけませんね。
歯の定期検診はとても大切なことなのですね。理想的な頻度はどのくらいですか。
はい、専門家にきちんとチェックしてもらって、口の中を健康な状態に保ってほしいと思います。
理想的な定期検診のインターバルですが、歯周病になっていない方に関しては3ヶ月おきに来てもらっています。一度歯周病になり、落ち着いた状態の方で1ヶ月に1回が目安です。

外観がとてもシックな有田歯科医院。このカラーリングを目印に足を運んでください。
ところで、歯周病は治るのですか?
どの状態を治ると定義するかによって違ってくると思いますが、口の中の原因菌を減らすことはできます。ただ残念ながら、歯周病で一度なくなった骨はほぼ元には戻りません。
また、歯槽骨の位置が下がると歯茎も下がってくるのですが、少し限局的に減っているような場合には骨補填剤を使うことで骨に代わって少し戻すことはできます。
むし歯の原因菌も減らすことができますか?
はい、可能です。当院ではまず、口の中の状態を検査することから始めます。ミュータンス菌の数、ラクトバチラス菌の数、飲食の回数、磨き残しのチェックなど、いくつかの項目について、すべて点数で表してむし歯のリスクをスコア化するのです。
結果は人によって違いますが、要注意項目がはっきりして、治療の方向性を決めやすくなります。
現状を把握した上で、正しいブラッシングやフロスの使い方を指導して磨き残しを防いだり、高濃度のフッ素を塗布するなどして、口の中の状態を改善していきます。
歯周病についても教えていただけますか?
当院では、歯周内科治療を始めています。歯周病菌のDNA検査を行い、カビ菌や細菌の有無をはじめ、厳密に歯周病菌を特定していきます。その検査結果を元に治療を進めることで、より効果的な内服薬をピンポイントで服用できるなど、有効な治療が可能になりました。
歯周内科治療にかかる期間はどのくらいですか?痛みはありますか?
治療期間は1ヶ月で、5〜6回の通院が必要です。通常の歯周治療に比べ痛みは軽減されます。また、きちんと通院していただければ、治療効果はわずか2週間で現れます。
痛みが少なくなったのですね。歯周内科治療は、どのような人にすすめですか?
インプラント治療を予定している方や、今後妊娠・出産予定の方、更年期の女性、40〜50歳の方に特におすすめしています。
歯周病菌がいる状態でインプラントをすると周囲炎になるリスクが高まりますから、あらかじめ検査をして適切な治療を受けることをおすすめします。
また、歯周病菌は早産や低出生体重児出産を引き起こす可能性を高めますから、これから妊娠・出産を考えている人にはおすすめです。さらに、産後に子どもに歯周病菌を感染させないためにも出産前の検査と治療は有効ですよ。ただし妊娠中には歯周内科治療はできませんから気を付けてくださいね。
あと歯周病は骨粗鬆症を悪化させることがわかっていますので、更年期の女性にもおすすめしています。
よい事尽くしですが、何か注意点はありますか?
抗生物質を使う治療方法なので、この治療は1回しか行わない、と患者さんにはお伝えしています。何度も繰り返すと、耐性菌が現れて抗生物質が効かなくなる危険性があるためです。
生まれたての赤ちゃんの口には当然のことながらカビも細菌もいません。成長するにしたがって増殖した細菌を人生80年の折り返し地点でリセットする、と考えてもらうようにしています。
細菌はパートナーからも感染します。ですからパートナーが変わる可能性が少ない中高年になってからでないと再感染の可能性がありますよ。
他にも最新の診療方法はありますか?
実はバクテリアセラピーという、ヨーロッパで誕生した予防医学を当院では取り入れています。体の中にある菌のバランスを変えることで体質改善につなげる細菌療法なのですが、悪い菌を減らしたところへ、もともと体の中にある善玉菌を入れてあげるのです。
善玉菌によってむし歯や歯周病の原因菌を減らせるばかりか、口臭を抑え、便秘や下痢などの便通を整えたり、胃のピロリ菌を減らし、アトピー性皮膚炎の症状を軽減するなど、さまざまな効果が期待できるのです。
手軽なタブレットで取り入れる事ができ、その上副作用がない優れた治療方法なのですよ。腸に入る乳酸菌などと同じように考えていただくと分かり易いでしょう。
口臭検査もされているとか?
はい。自分では分かりにくい口の中の臭いを数値化できるので、それで来院される方が増えています。口臭と言っても原因はさまざまです。
口臭測定器を使って行いますが、硫化水素とメチルメルカプタン、チメチルセルカイトというガスを拾ってくれます。この反応で口の中や舌の汚れ、歯周病菌、内臓系の疾患などがわかります。
測定は5分程度で、1回の測定料金も手頃なので、口臭が気になる方はまず検査を受けてみてはいかがでしょうか。
健康な口の中を保つために検査は大切なのですね。
適切な治療を行うためには、まず検査をして、自分の口の状態を把握することが大切だと思います。数値化されたデータはとても説得力がありますよ。
もちろん検査や治療後は、正しくブラッシングをすることや、できるだけ間食をしないという心掛け、キシリトールガムを噛んで唾液の分泌量を増やす、3ヶ月に1回は歯科医院に行って高濃度のフッ素を塗布することを習慣化するなど、口の中を良い状態に保つ努力も必要です。
また、歯の再石灰化に有効なフッ素とリン、カルシウムが全部入った歯磨き粉があるので、それはおすすめです。また電動ブラシなら超音波歯ブラシをおすすめしていますが、電動であることに安心して磨き残しが出ないように注意が必要です。
先生は基本的に詰め物に銀歯は使わないそうですね?
銀歯を入れるためには、削らなくて良い部分まで削る必要が出てくるので、削る部分を最小限に抑えるために、第一選択として白い素材のコンポジトレジンを使うようにしています。
銀歯の長所は丈夫で壊れる心配がないことです。ただ歯は上下の噛み合わせで機能するので、健康な歯が銀歯に負けて摩耗や破折する可能性があります。
一方のコンポジトレジンは銀歯より柔らかい素材なので、強い負荷が掛かっても健康な歯はダメージを受けにくくなります。もちろん個々の歯によって適応しにくいケースはありますけれど。
インフォームドコンセントはとても重要なので、きちんと素材ごとのメリット・デメリットをお伝えした上で、最終的には患者さんに選んでいただくことになります。
広島ドクターズをご覧の方に向けてメッセージをお願いします。
できるだけ歯を残したいという思いは、患者さんも私も同じです。患者さんの意思をきちんと確認し、どれだけそれを実現できるのか、ということをいつも考えながら治療に当たっています。
最近は、全体的にむし歯の子が減っていて良い傾向だと思います。乳幼児健診が1歳半と3歳時にありますが、感染していればミュータンス菌が増えるのがこの時期です。フッ素を塗ったり、きちんとした仕上げ磨きをして、お子さんの口の中をケアしてほしいと思います。健診だけではなかなか菌の状態までは把握できませんから、幼い頃から予防のために歯科医に定期的に通うことをおすすめします。むし歯のない健康な永久歯列はお子さんへの最高のプレゼントです。
80歳の時点で20本の歯を残せるように、長いビジョンで歯のことを考えてほしいですし、むし歯や歯周病をできるだけ繰り返さないように、口の中の細菌数をコントロールしていく、という認識をできるだけ多くの方に持ってほしいと思っています。
医師のプロフィール
有田 竜二 先生
●朝日大学歯学部卒業
●朝日大学研修医終了
●朝日大学 口腔機能修復学講座 歯科補綴学分野(局部床義歯学) 修練医
●なかとみ歯科
●わかさ歯科クリニック
●有田歯科医院
‐研修‐
●Oral Physician終了
●ITI Basic Course終了
●SJCD Basic Course終了
●Nobel Biocare Step-by-Step終了
●JACID J.S.O.I.Official Course終了
●WOB.step up Course終了
●WOB.get up Course終了
‐所属‐
・広島SJCD
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