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知らないと損をする、健康保険が適用になる歯の矯正治療とは? 厚生労働省が定めた先天疾患にあてはまると診断されたり、顎変形症の外科手術の前後に行う矯正であれば、全額自己負担だと思っていたものが1割負担で矯正可能に。|花岡矯正歯科クリニック|花岡宏一 先生 | 病気や症状。治療や予防に役立つ 病院・医院・クリニック情報サイト『広島ドクターズ』
(この記事は2015年10月22日時点の情報です)

花岡宏一 先生(歯科)

健康保険が適用される歯科矯正について

 
花岡矯正歯科クリニック
【住所】広島県広島市中区大手町1丁目1‐20ニュー大手町ビル5F
【TEL】 082-247-1222
     
先天的な疾患に起因した咬合異常や顎変形症の術前・術後に必要になる矯正歯科治療は健康保険が適用になります。|花岡矯正歯科クリニック|花岡宏一 先生
優しいまなざしと落ち着いた雰囲気で患者さんやそのご家族の話に
じっくりと耳を傾けてくださる花岡先生です。
 
歯の矯正はお金がかかるから、とはじめからあきらめている方はいらっしゃいませんか。実は健康保険が適用になる矯正があって、厚生労働省が定めた先天疾患にあてはまると診断されたり、顎変形症の外科手術の前後に行う矯正であれば、全額自己負担だと思っていたものが1割負担で矯正可能になります。
ただし、どこの医療機関でもその治療ができるわけではなく、認可された医療機関で診断・治療してもらう必要があります。現在、健康保険が適用になる矯正歯科治療を行なえる医療機関は、広島近辺では16機関のみ。
今回はその中の1つ、広島市中区にある花岡矯正歯科クリニックの花岡宏一先生に、健康保険で治療が可能になる矯正歯科治療について詳しくご説明いただきました。
誰にでもあてはまる話ではありませんが、知らないと損をする人がきっといるはずです。ぜひご一読いただき、参考にしてください。

健康保険が適用される矯正があるとうかがったのですが?

一般的には矯正は基本的に健康保険の適用外、という認識が広く知られていますが、例外がいくつかあります。
他の歯科医院では自費で矯正していた方が当クリニックに来られて、保険が適用になることに驚かれるケースがあるので、あまり知られていない可能性はありますね。

具体的にはどういったケースなのですか?

健康保険が適用になるケースは大きく分けて2つあります。
1つは、厚生労働大臣が認める先天的な疾患に起因した咬合異常のものです。このケースでは、1980年代に矯正が保険適応になった最初の症例が唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)で、生活能力を得るために必要な自立支援医療として医療費の支給を受ける事ができるようになりました。
「唇顎口蓋裂に起因した音声・言語・咀しゃく機能障害の改善に関する医療に限られる」と定義されているもので、口と鼻の境界の上顎に骨が無い部分があるために物を吸ったり、噛んだりすることができないという理由から、厚生労働省が認定したのです。
その後2000年代に入っていくつかの症例で保険の適応が可能になり、現在全部で47症挙げられています。一部ですが、例えば唇顎口蓋裂以外に、ゴールデンハー症候群、鎖骨・頭蓋骨異骨症、クルーゾン症候群、トリーチャーコリンズ症候群、ピエールロバン症候群などです。また、6歯以上の非症候性部分性無歯症も対象です。ときどき、元々歯が1〜2本ない方がいらっしゃいますが、これが6本以上になると対象になります。日本矯正歯科学会のホームページにアクセスすると、他の病名もすべてご覧いただけますよ。
そしてもう1つは、顎の外科手術、全身麻酔を要するような顎変形症の術前・術後に必要になる矯正歯科治療が保険の対象になります。
ただし、普通の小児矯正や単に歯並びが悪いというケースはこれには当てはまりませんので、気を付けてくださいね。

よくわかりました。何か注意点はありますか?

はい。先天疾患の矯正歯科治療が保険でできる診療所と、顎変形症の矯正治療が保険でできる医療機関は限られているので、事前に直接確認しておく必要があります。

知りませんでした……。どこの歯科医院でも大丈夫というわけではないのですね?

まず先天疾患の矯正に関しては、自立支援(育成)医療の算定ができる医療機関でなくてはいけません。また、顎変形症の矯正に関しては、顎機能検査施設として指定されている医療機関でなくてはならないのです。
それぞれの症状を算定するためには、この認可された医療機関でないと保険の適用にはならず、全額自己負担ということにもなりかねませんので、注意が必要です。今現在、広島市近辺では16の医療機関が指定を受けており、当院もその1つです。
先ほども出てきましたが、日本矯正歯科学会のホームページで、認可を受けている指定医療機関のリストがご覧いただけますので、事前に確認しておくとよいでしょう。

ありがとうございます。先生のクリニックが受けている認定について教えてください。

詳しく言うと、18歳以下の患者さんに適応される育成医療と18歳以上の患者に適応される更生医療があり、収入が特別多いケースは別ですが、広島ではこれらの補助を受ければ1割負担で矯正治療が可能になります。
当院は、育成医療・更生医療ともに自立支援(育成)医療機関ですし、顎機能検査施設の認定を受けていますので、きちんと診断することができます。

それでは、先天性の疾患がある場合の矯正治療の内容について教えてください。

先天性の疾患がある場合でも、基本的な矯正のやり方は通常と特に変わりません。ただいろいろな骨の状態が特殊なケースが多くなります。
例えば唇顎口蓋裂のケースでは、間にある上顎の骨が無いので、鼻と口が繋がっている状態です。ですからその裂部を埋めるために腰の骨を移植して土台を作る必要があります。また裂部は骨が無いので歯はほぼ無いことが想定され、上顎の発達が弱いので下顎が反対咬合になっています。その結果、下顎を下げるための手術をすることもあります。

それらの工程はすべてこちらのクリニックで行うのですか?

いいえ、当クリニック以外にもいくつかの病院にかかる必要がありますね。
まず、先天性の唇顎口蓋裂の場合、裂部が大きいと唇もすっぱりと割れていることが多いので、赤ちゃんがおっぱいをまったく吸うことができません。そのため0〜1歳時点でまず唇や口蓋をつなぐために最初の手術をしていることが多いのです。
この時点では骨は繋がってはいないのですが、その時の瘢痕と呼ばれる手術痕で皮膚が固くなって伸びず、上顎の成長を抑えてしまうことがあるのです。その結果、上下の顎にズレを生じることもあります。

その歯を矯正するのは難しそうですね?

骨の状態が整っていないので、そこに生えてくる歯も相応の状態になることが多いです。唇が繋がっていても骨はないので、矯正を始めるに当たって、裂部に骨を補うことから始めることになります。
その骨が生着し、そこに骨ができれば、その後は一般的な流れに沿って矯正します。

なるほど。では口蓋裂の疾患がある場合、何歳ぐらいに骨を補う手術をするのでしょう?

この手術は、小学校入学前に始めたいとおっしゃる方もいらっしゃいますが、あまり小さいと腰の骨が取りづらいこともあって、あまり小さいうちに手術するのはどうか、という先生もいらっしゃいます。口腔外科や形成外科の先生方の間でも意見が分れるところですね。
広島市ではお子さんの体重が20キロぐらい、小学校3年生ぐらいで始める方が多いようです。矯正に関しては、通常の矯正と同じで、前歯が永久歯に代わった頃に始めるのが一般的で、乳歯列で行うのは稀なケースだと思います。
先に顎を広げ、骨を埋め、骨がつながるかどうか経過観察。成長が止まったら上下の矯正器具を装着して様子を見ます。
具体的には、親知らずを除いて一番奥にある7番目の歯が出た頃を見計らい、身長の伸びが止まったら、そこで外科手術が再び必要なのかどうか、矯正治療を単独で行くのか、見極める必要があります。
基本的に下顎の成長は20歳ごろまで続きますが、成長のピークは女性で12〜13歳ぐらい、男子で15〜16歳ぐらいです。身長の伸びと下顎の成長はほぼ同じタイミングです。

その間、どのような頻度で通院が必要になるのですか?

歯を動かしている最中なら1カ月に1回、動かし終わったら、大きなお休みごとに来ていただく、というように動かしては休み、休んでは動かしを繰り返します。下の顎が完全に成長した段階で、最終的には通常と同じような矯正器具を着けることになります。

先天的な疾患に起因した咬合異常や顎変形症の術前・術後に必要になる矯正歯科治療は健康保険が適用になります。|花岡矯正歯科クリニック|花岡宏一 先生
原爆ドームにほど近いビルの5階。患者さんの負担を減らしたいと毎週土曜日と第1・第3日曜日は診療中。
 

先天性の疾患がある方に対して気を付けていらっしゃることは何ですか?

通常の矯正も先天性の疾患のある方も、矯正に関しては基本的にはほぼ何も変わりません。
ただ先天性の疾患がある場合、歯茎が腫れていたり、むし歯が多かったりする傾向があります。おそらく噛み合わせが悪くてなかなかきれいに磨けなかったり、そこまで手が回らなかったりと事情はさまざまだと思いますが、その場合には、きちんと歯磨き指導もしますね。

わかりました。では次に外科矯正についてお聞かせください。

重症の出っ歯や受け口、あるいは、顎の歪みを伴う患者さんでは、顎に対する外科手術と矯正歯科治療を組み合わせた、いわゆる外科的矯正歯科治療を行うと好結果が得られることが多いことがわかっています。
例えば顎がしゃくれている受け口の場合、歯並びを整えることだけで治そうと思っても歯に負担がかかってしまい、なかなか難しいのです。

確認しておきますが、美容外科とは違うのですよね?

はい。主訴は通ずるものがありますが、美容外科ではありません。この場合の外科矯正とは、噛み合わせに問題があり、それを改善するために行う顎変形症の術前・術後に必要になる矯正歯科治療が健康保険の対象になる、ということです。

料金についても教えていただけますか?

保険が適用になると、矯正自体は25万円ぐらいの負担で済むと思いますが、入院して手術をすると30〜40万円程度の負担が必要になるので、結果的には60万円程度の費用がかかることになります。広島の平均的な自己負担の矯正費用が70万円程度ですから、若干は費用が抑えられるかな、という程度の違いになりますね。

資料写真を拝見すると、手術前後で顔の大きさもまったく別人のようですね。

外科手術が必要なほど噛み合わせが悪い場合、それを改善すると人相や顔の大きさにはかなりの変化が現れることがあります。そのため、外科矯正は顔に何らかのコンプレックスがある場合におすすめしています。
当院に来られる患者さんもいろいろいらっしゃいます。顎がしゃくれている反対咬合、逆に、下顎が出ていない(小さい)下顎後退症、顎が右や左にずれている偏位、笑うと歯茎が見えるガミースマイルの方などいろいろですが、単に見た目が良くない、というだけでは外科矯正は受けられません。
何度も言いますが、外科矯正が受けられるのは、歯の土台がずれているために噛み合わせに問題が出ているケースに限られるということです。歯の矯正だけでは歯そのものに大きな負担がかかり、歯自体が将来的にダメージを負う可能性が予想される場合にのみ、手術に踏み切るのです。

具体的にはどのように外科手術が行われるのですか?

1年から1年半かけて矯正器具を装着し、手術前の術前矯正を受けていただきます。そしてこの矯正器具を着けたまま手術を受けます。
基本的には顔にメスを入れるのではなく、口の内側からメスを入れますから、見た目に傷は残りません。ちょうど親知らずを抜く場合を想像していただくとわかりやすいと思います。親知らずよりはもうちょっと切りますけれど。
そして、例えば反対咬合の場合であれば、左右の顎の骨をそれぞれ輪切り状にカットし、切った骨の分だけ顎が引っ込む、ということになります。
カットした骨は骨折した状態ですから、プレートで骨を固定し、骨が繋がるのを待っていずれ外します。外す際には部分麻酔で大丈夫です。

想像した以上に本格的な手術なのですね。

こういった手術は、当院のような矯正歯科で行うのではなく、日赤病院や広大病院など大きな病院の形成外科や口腔外科に依頼することになります。CTなどの画像などを見ながら、執刀医に今後の矯正計画をきちんと伝え、手術していただきます。
何度も言いますが、全身麻酔の本格的な手術です。そのため10日間から、長い方で2〜3週間の入院が必要になります。手術自体は2〜3時間で終わりますが、手術後1週間ぐらいは、顔がパンパンに腫れて口が開かなかったりするので、一般的にそのくらいの入院期間が必要です。顔が腫れている間は食べ物が口から入れられませんので、その間は流動食になります。

どのような経緯で手術するのですか?

まず来院された患者さんの外科矯正が決まったら、先ほども申しましたが、こちらから大きな病院を紹介して行っていただき、手術ができるかどうか術前診断をしてもらいます。
手術ができる、ということになれば、術前矯正治療を始めます。
手術日が決まったら、1カ月ほど前に再検査などを行います。
手術日の1日前から入院し、そこから2〜3週間入院が続き、退院したら術後の矯正治療を当院で継続する、という流れになります。
手術によって約8割の噛み合わせが出来上がってきますが、最後の微調整は矯正歯科の力が必要になるのです。

手術した方がよい、とする判断基準はなんですか?

上顎骨と下顎骨のギャップが大きいか小さいか、それが決める際の大きな要因になります。
100%分析値になりますが、歯を動かしていく際に、歯を動かした後に歯の根っこが歯茎に収まっているかどうかシミュレーションします。もし骨から歯が逸脱するようなシミュレーション結果が出れば、それは矯正だけで歯並びを整えることは不可能で、外科手術が必要だという判断基準が得られます。
また、患者さんが手術を希望されているかどうか、は重要ですね。噛み合わせがどんなに悪くても、ご本人が希望されないのであれば手術は当然あり得ません。どうしても手術が嫌だということであれば、歯には負担がかかりますが、ちょっと無理をして矯正だけでできるところまで噛み合わせを整える、ということになります。

なるほど。では最後に、地域医療に対する先生のお考えをお聞かせいただけますか?

はい、わかりました。特別なことは何もないのですが、当院では、来院された患者さんの治療に全力で取り組んでいます。その結果、みなさんが笑顔になることに何よりの喜びを感じています。矯正専門医として、患者さんの歯や骨の状態に合わせた、最善の矯正方法を常に見い出していきたいと考えています。
また、先ほどから話に出てきていますが、当クリニックは形成外科や口腔外科など他の関連病院の先生方と連携を図りながら、地域のみなさまに貢献していくことを心掛けているので、症状や状態に応じて必要な病院へのご紹介が可能です。
矯正歯科医の場合、患者さんの歯に関して将来を見越して、長期に渡る治療計画を立てることが求められます。もちろん、当院も完全無欠ではありませんが、きちんとした説明と患者さんからの同意を大切にしておりますので、患者さんを大切にする矯正専門医として、地域医療できちんと役割を果たせるように努めていきたいと思います。


医師のプロフィール

●九州歯科大学卒業
●広島大学大学院(歯科矯正科)入局
●広島大学病院 勤務 
●花岡矯正歯科クリニック 勤務

-所属-
・日本矯正歯科学会(認定医)
・日本臨床矯正歯科医会
・広島矯正歯科医会
・広島歯科医師会学術委員
・日本顎変形症学会
・日本口蓋裂学会

 

 
 

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