(この記事は2016年3月16日時点の情報です)
杉本 栄一郎 先生(眼科)
近視や老眼でも裸眼で過ごせる!?「近視矯正手術」「多焦点眼内レンズ」
すぎもと眼科
【住所】広島市安佐南区伴南1-5-18-8-201
【TEL】 082-849-6699
※すぎもと眼科は閉院し、2020年4月より南区に「VISION PLUS EYE CLINIC(ビジョンプラス・アイクリニック)」として移転開業。
説明も含めて丁寧な診察に定評があり、大変勉強熱心な杉本先生
近視や老眼の矯正が日帰り手術でできること、ご存じですか?
最高の医療技術を提供するという理念のもと、レーシックの中で最高峰といわれるiDesign iLASIKを導入した近視矯正手術や、老眼にも対応する白内障手術「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」を行っている数少ない医療機関「すぎもと眼科」の杉本栄一郎先生に、近視矯正手術と多焦点眼内レンズについてお話をうかがいました。
多焦点眼内レンズは白内障や老眼のほか、近視や乱視も治すことができるとか。
いずれも一生に一度の手術。メリット・デメリットをきちんと知った上で、信頼できるお医者さんにお願いすることが大切です。
眼鏡やコンタクトレンズが煩わしいと感じる方、白内障手術をお考えの方、ぜひご一読ください。
近視矯正手術で先生が手がけていらっしゃる方法はどんなものですか?
大きく今は2つで、レーシックとICLという手術です。
近視矯正手術を希望される患者さんに人気の方法はどちらですか?
近視矯正手術で1番多いのはレーシックです。
レーシックとはどのような手術ですか?
レーシックもピンからキリまであります。レーシックというのは基本的に角膜をレーザーで削るという手術ですが、理屈上は削った分だけ霞みが出ます。その霞みをできるだけ抑え、「見え方の質」を追求したレーシックがiLASIK (アイレーシック)です。
iLASIK は、どの病院でもうけられるものではないんですよね?
iLASIKシステムをもっている病院でないとうけることはできません。広島では大学病院をはじめ、レーシックシステムを設備している総合病院はありません。当院ではiLASIKをさらに進化させたiDesign iLASIK (アイデザインアイレーシック)を導入しています。
iDesign iLASIK を希望される方は多いですか?
当院を受診される方は値段よりもクオリティを求めていますので、iDesign iLASIKを希望されることが多いです。当院ではレーシックは可能な限りiLASIKで行っています。眼鏡やコンタクトレンズと違い、手術はやり直しができません。手術するからには、最高の医療技術を提供するというのが当院の基本理念です。
レーシックができる方、できない方がいますか?
います。5人に1人くらいは、ご希望があってもレーシックができない、向いていないことがあります。円錐角膜のような眼に病気がある場合や、近視や乱視が強すぎる場合、ドライアイがひどい場合などは、手術後に合併症が生じる可能性が高くなるため、レーシックをお断りすることがあります。
今はレーシックですべての近視を治す時代ではなく、適性のない方にはICLという他の近視矯正手術をお勧めしています。
レーシックをうけるのに年齢的な制限はありますか?
ガイトラインではレーシックは18歳から受けることができ、上限はありません。ただ、近視を治す手術であり、老眼は治せません。特に40歳以上の方は、そこはちゃんと理解しておいていただく必要があります。
若返りの手術というのは存在しませんので、手術には必ずメリット・デメリットがあります。まず「なぜ手術をするのか」という目的を明確にし、その上でどこまでデメリットを受け入れられるのかを納得いくまで説明させていただきます。
ではもう一方のICLはどのような手術なのでしょうか?
眼の中にソフトコンタクトレンズを入れるイメージの手術です。角膜を削らない手術なので、強度近視、ドライアイ、円錐角膜の方でも受けられる手術です。
近視矯正手術に際して大事なことは何でしょうか?
大事なことは、手術を受ける方にとってどちらの手術が向いているのか、またはどちらの手術も向いてないのか、手術前にきちんと適性検査を行い、評価する事です。ただ値段が安いからなどの安易な理由ではなく、十分にご自身の眼について知っていただいた上で、術式を選択してもうらのがよいと思います。
レーシックとICL、それぞれ手術の所要時間はどれくらいでしょうか?
レーシックは両眼で20〜30分くらい、ICLは片眼で15〜20分くらいです。
レーシックもICLも日帰りで、裸眼で帰れるんですか?
どちらも日帰り手術で、裸眼で帰宅できます。
レーシック当日はどのように過ごせばいいのでしょうか?
手術直後はすこし見えにくいので車の運転は控えていただきます。食事、トイレなどは可能です。当日は傷を治すために早めに寝てしまうのが一番です。
レーシックやICLの効果はいつ頃から実感できますか?
個人差はありますが、翌日からある程度、視力が回復していることが多いです。
レーシックについてネガティブな話もありますが…
「レーシックは危険だ」という報道もありましたし、消費者庁によるレーシックに対する注意喚起もありました。レーシックトラブルの話をする時に混同してはいけないのは「レーシックという技術が危ない」のか、それとも「レーシックを扱う人間が危ない」のか、という事です。
これはレーシックに限りませんが、トラブルというのは科学技術の扱いを間違えたときに生じるものであり、技術そのものが悪いわけではありません。
安全やクオリティを維持するために必要なコストを省けば、某眼科であった集団感染のような事件がおきます。適性がない方に手術を行えば良くない結果になる可能性があります。つまりレーシックを扱う医者にモラル、知識がなければ、それは危険なものになってきますので、信頼できる医者選びがすごく重要です。
元に戻せない目の手術。失敗すると怖いなと思ってしまうのですが…
いかなる手術も100%を保証することはできません。近視矯正には眼鏡、コンタクトレンズ、手術があり、それぞれのメリット、デメリットをよく考えて、選択していただければよいのではないかと思います。例えば、失明するような大きな合併症の発症率はコンタクトレンズのほうがレーシックより10倍も多いのです。
僕ら医者側のすべきことは、数ある手術の中からもっとも安全な手術を導入し、できるだけの準備を行い、それでも不幸にもトラブルが発症してしまった時には最大限、対応させていただくことだと思っています。
一番、きちんとした医療を継続的に行い、患者さまの信頼を勝ち得ていくしかないかなと思っています。
ただ1つだけ。レーシックは完成された手術のひとつであり、iLASIKは高度に洗練されたレーシックです。事実、アメリカではiLASIKはNASA宇宙飛行士、空軍パイロットが受けられる唯一のレーシックとして認められています。
iLASIKとICLのお値段はどれくらいでしょうか。
当院では両眼でiLASIK 36万円、ICL 68万円です。
一人ひとりの患者さんのニーズに合った最適な治療法を選択してもらうため、
最新の医療技術と徹底した説明でクオリティを追求。
次に、老眼について教えてください。
「近くが見えない」という症状を世間では老眼と呼んでいますが、正確には眼の中の水晶体という透明で軟らかい凸レンズが加齢によって硬くなってくるという現象です。
目の中の筋肉を使って軟らかい水晶体の厚みを変えることによって、ピントの距離を変えられるわけですが、水晶体が硬くなってくると、どれだけ筋肉ががんばっても厚みが変わらないのでピントが合わせづらくなってきます。近視の方でも眼鏡やコンタクトレンズで遠くが見える状態にすれば、年齢とともに近くはみえにくくなってきます。個人差はありますが、40〜50歳で老眼を自覚される方が多いです。
加齢によって水晶体が硬くなる事は避けられませんか?
老化現象は避けられません(笑)。現在、水晶体を若返らせる目薬、サプリメント、トレーニングなどはありません。
そんな老眼も今や手術で治せるようになったそうですが?
老眼を治す、は言い過ぎかもしれません。老眼に対応する、というのが正確な表現にはなります。つまり老眼鏡をかけないと近くが見えにくいのが老眼で、老眼鏡をつかわなくても裸眼で生活できるようにすることが老眼を治すということです。
45〜55歳くらいの軽度〜中等度の老眼の場合、片方の眼だけわざと近視にするモノビジョン・レーシックというのがあります。片眼は遠く用、もう片方は近く用、両眼でみれば遠くも近くも見える治療です。ただ老眼が進行してくると対応できなくなります。
カムラ・インレーやレインドロップという、角膜の中に特殊なレンズを入れるものもありますが、効果が不安定なのと合併症がやや多いため、当院では行っておりません。
55歳以上の進行した老眼に対して、日本で広まってきている老眼手術があります。硬くなってしまった水晶体を取り除き、眼の中に遠近両用のレンズを挿入する手術です。
なんという名前の手術ですか?
「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」です。水晶体は年齢の変化で硬くなると同時に白く濁ってきます。この病気を白内障といいます。超音波器械で濁りをとり、人工レンズを入れる白内障手術は、すでに完成されています。従来の白内障手術で用いられていたのは単焦点レンズで、遠くにピントを合わせた場合、遠くは見えますが近くは見えません。近くを見るときは老眼鏡をかけていただくようになり、基本的に白内障手術と老眼鏡はセットでした。でもせっかく手術をうけるのなら、なるべく老眼鏡を使いたくないという方のニーズに対して、新しく開発されたのが多焦点眼内レンズです。主に遠くと近くにピントがありますので、遠くも近くも裸眼で見えます。
多焦点眼内レンズは白内障も老眼もある方が対象ということですか?
そうなります。難しいのは白内障の診断です。実はどのくらい水晶体が濁れば白内障と診断するのか、明確な基準はありません。なぜなら水晶体は年齢とともに少しずつ濁ってくるので、正常と病気の線引きができないからです。
一生に一回は白内障手術をうける必要があり、そのとき眼の中に入れた人工レンズは一生もつというのが事実です。言い換えれば、一生に一回、白内障手術をしておけばよいということになります。
では手術をうける時期はいつなのでしょうか?それを決めるのは患者さま自身です。従来は視力が低下し、例えば運転免許証が更新できない、老眼鏡を使っても新聞が読めないなど、日常生活に大きな支障がでるようになれば白内障手術をすすめていました。
多焦点眼内レンズの登場により、白内障で老眼まで治せる時代になった今、患者さまが老眼を治したいと思えば、それが白内障手術の時期だと言えます。
近視も治りますか?
多焦点眼内レンズの度数を合わせることにより近視も同時に治せます。さらにオーダーメイドで多焦点眼内レンズを作製すれば乱視まで治すこともできます。
手術の説明で大事にされている事はありますか?
多焦点眼内レンズによる老眼手術といっても、若いころの見え方に戻るわけではありません。まず患者さまのニーズをお聞きし、次に多焦点眼内レンズを眼の中にいれると手術後にどういう見え方になるのか説明し、メリット、デメリットを十分ご納得していただいた上で、最終的に結論をだしていただくようにしています。決して当院から手術を強要したり、結論を急かすことはありません。
多焦点眼内レンズに年齢制限はありますか?
多焦点眼内レンズを用いた白内障手術に年齢制限はありません。
現代は70歳の方でも元気です。ゴルフ、スキューバ、水泳、ジムなどのスポーツや裁縫、絵画、パソコンなどの近見作業、女性の方はお化粧と、非常に活動的なので、眼鏡を使いたくないという方は多いです。術後に裸眼で生活したいという希望があれば、何歳になっても多焦点眼内レンズは可能です。
基本的には55歳以上の方が適応ですが、55歳未満の方でも場合によっては行うこともあります。例えば生まれつき、アトピー性皮膚炎、強度近視、ケガなどによる白内障の場合です。
多焦点眼内レンズにリスクはありますか?
リスクは通常の白内障手術とまったく変わりません。白内障手術はすでに完成の域にあり、当院の手術成功率は99.9%です。
それでも手術に抵抗があり、眼が見えなくなる70〜80歳まで白内障手術を先延ばしにされる方もいますが、先延ばしにしてもリスクが減る訳ではありません。むしろ進行した白内障はリスクが高いです。老眼鏡のない生活を送りたいという希望があり、多焦点眼内レンズの原理、手術のリスクを理解されている方は55〜60歳でも手術をうけられています。
では、遠くから来られる方もいらっしゃるのでは?
備後や県北など県内全域から来られます。山陰には多焦点眼内レンズができる病院がないので県外から来られる方もいます。手術後に通院できない方は安全性を担保できないので手術をお断りしていますが、遠方の方でも地元にかかりつけの眼科医がいて、連携がとれる場合は大丈夫です。
最後に、広島ドクターズ読者のみなさんにメッセージをお願いします。
信頼できる医者を選んで欲しいと思います。良い医者は患者の言うことに耳を傾けてくれると思います。希望もきかず、「この治療をせんといけん」とか「やめときんさい」と個人的見解を押しつけるような医者は避けるべきでしょう。
例えば、時間がかかっても薬で治したい方もいれば、手術で切ってすぐ治したい方もいる。こまめに通院できる方もいれば、お仕事などで通院できない方もいます。その方のニーズ、環境によってベストな治療法はひとつではありません。患者さまのニーズが多様化している昨今、選択されるべき治療も個人個人で異なると思います。
当院では眼のデータ、病気の知識、治療の利点欠点など必要な情報をすべて提供し、必ず治療を選択していただけるように説明します。
治療を選択するのは医者ではなく患者さまです。どの治療、手術でも安心して選択していただけるように、当院では最新の医療技術を導入し、万全の準備を心がけたいと思っています。
医師のプロフィール
杉本 栄一郎先生
●広島大学医学部卒業